日本でハワイアンジュエリーについて学んだ後、ハワイに行き技術習得をしましたが、その際に、ハワイと日本では随分とハワイアンジュエリーに対しての解釈が違っているなと感じました。ハワイのトップブランドの方のお話と私が調べた内容を、このページに記載したいと思います。
日本では、「ハワイアンモチーフには全て意味がある」と言われていますが、実際にハワイに行くとそのように記載しているお店は全くありません。その後、それは「日本独自のもの」ということを教えられ、とてもショックだったことを覚えています。
なぜ、そのような違いが出来たのか? それは、ハワイアンジュエリーの歴史に関しての認識の違いが原因のように思います。
ハワイ王国最後の女王“リリウオカラニ”女王が身に着けていたバングルが始まりだと言われています。このバングルには“Homanao Mau” (ホオマナオマウ)と刻まれていますが、その意味がハワイと日本で大きく違います。
ハワイでは“いつも覚えている”と訳され、日本では“永遠の思い出”と訳されています。
親交の深かったイギリスのヴィクトリア女王の夫、アルバート王が亡くなったことを悼み、自身も王との思い出を忘れない為に、 Hoomanao Mau(永遠の思い出)と刻んだ。というのが日本の解釈です。
このバングルにはHoomanao Mauの文字の横に、8つのシンボルが刻まれており、その一つひとつ、女王の想いや祈りが込められて います。女王として国や国民を正しい方向へ導く為のコンパスや、守護されるという意味を持つシェブロン等です。リリウオカラニ女王は、女王としてのその思いを“Hoomanao Mau”(いつも覚えている)という言葉に込めたというのが、ハワイの解釈になります。
モチーフ一つひとつに意味が込められている。というのも素敵ですが、モチーフ一つひとつというよりも、身に着ける方がハワイアンジュエリーに想いを込める。というものなのではないでしょうか。リリウオカラニ女王が、自身の想いや祈りをシンボルとして刻んだように。
ですので、WAIOLIではお客様のお話を伺いながら、目の前でお客様だけのモチーフをデザインし、ハワイアンジュエリーに想いと共に刻み込んでいきます。
模様は、親交のあったイギリスから入ってきたイギリス的なデザインと、ハワイ独自のデザインが融合し、時代と共に変化しながら今のハワイアンモチーフになりました。
Maileは神事の際に使われる植物で、神聖なものと繋がり守護されるために使います。その事から神聖な葉とされ、結婚指輪などに人気のデザインです。
スクロールとは「ゼンマイのように先端が渦巻き状になっている巻軸文様。古代ギリシアのイオニア式、コリント式柱頭に飾られたり、パルメットやアカンサスを繋ぐ文様として発達した。」(ヨーロッパの文様辞典 視覚デザイン研究所)とあります。それではパルメットとアカンサスとは何の事でしょうか。
「パルメットは手のひらを広げたような扇状の形をしていて、棕櫚(しゅろ〈やし科の常緑高木〉)をもとにデザインされた文様であるとされている。」
中略
「ロータスやアカンサスとともにヨーロッパの代表的な植物文様である。ロータスやアカンサスと組み合されたり、葉先が尖ってカーブを描くものなど様々なバリエーションが作られ、近隣諸国に影響を与えた。」(ヨーロッパの文様辞典 視覚デザイン研究所)とあります。ヨーロッパの中世においては 棕櫚の木が“生命の樹”を象徴したように、パルメットも生命力や神聖さを表すものであったそうです。
「紀元前5世紀末より古代ギリシアのコリント式柱頭装飾に用いられ、今日までヨーロッパで一般的な植物文様として頻繁に使われる。」(ヨーロッパの文様辞典 視覚デザイン研究所)とあります。ちなみにアカンサスは地中海地方に自生する鋸葉状の植物です。以上の事からスクロールは、パルメットやアカンサスといった植物文様を繋ぐ植物文様だと解釈出来ます。日本でいう唐草文様=スクロールだと思っておりましたが、 唐草文様とは植物の茎やつるを文様にしたものの総称だと分かりました。
棕櫚は古代メソポタミアやエジプトで聖樹とされた。季節による落葉はなく毎年新しい葉をつけ、枯れるまで実をつけるので生命育成・繁栄のシンボルである。また熱い地方では棕櫚の葉は日陰を作り太陽の熱から守ってくれるところから、救済のシンボルでもある。動物たちが集う生命の樹としても表される。(ヨーロッパの文様辞典 視覚デザイン研究所)とあります。
生命の樹はイスラム教の植物文様です。聖樹を中心に動物を左右対称に配置するササン朝ペルシアのモチーフがイスラム美術にも取り入れられました。それがやがて、動物を除き一本の木だけで生命の樹を表すようになったそうです。生命の樹は、豊饒や生命を象徴しています。
19世紀に活躍したデザイナーに、イギリスのウィリアム・モリスがいます。モリスはアカンサス文様を愛好し数々の作品に残しています。ウィリアムス・モリスが生まれたのは1834年イギリス。ハワイアンジュエリーの生みの親とされるハワイ王国最後の女王リリウオカラニは1838年生まれ。ハワイとイギリスは親交がありハワイアンモチーフはイギリスから入ってきた文様が、ハワイのデザインと融合して出来たものです。そしてハワイの職人の中でもスクロールをイングリッシュスクロールと呼ぶ人もいます。この事から、ハワイに入ってきた イギリス的文様とはアカンサス文様だったのではないかと思います。ハワイの歴史を紐解き調べたものではないので推測に過ぎませんが、アカンサス模様を愛し数々の作品に取り入れたモリスと、ハワイアンジュエリーの生みの親であるリリウオカラニ女王が同じ時代を生き、ハワイがイギリスの影響を大きく受けている事が、何の関係もないとは私には思えません。当たり前のようにスクロール = 唐草だったり波と思っていたものを改めて調べてみると、様々な文様との組み合わせがあり、意味が込められている事を感じました。そして、今当たり前に使っている文様が実は、紀元前から存在し少しずつ変化しながら受け継がれてきた事に感動を覚えました。そのような歴史を感じつつデザインとしてお楽しみいただければと思います。ハワイアンジュエリーとして大切な事は、身に着ける本人が想いを込め、そのハワイアンジュエリーと共に歩み、意味を見出していく事です。こうでなくてはいけないというものは無く、あなただけのハワイアンジュエリーを見つけていただけたらと思います。 WAIOLIはそのお手伝いをさせていただきます。